午後7時のアフタヌーンティー

昨夜、我が家のお隣さんフローランスが実家のオーヴェルニュから1ヶ月ぶりに戻ってきた。
オペラ歌手である彼女は、フリーランスで仕事しているため、家にいることが多い。
そのため、現在専業主婦状態の私とは顔を合わせる機会が多く、気がついたら仲良しになっていた。
今朝、アパルトマンの中庭で子供を遊ばせていたら、彼女がやって来て、子供の頃から可愛がってもらっていた親戚のおじさんが昨日亡くなったと告げた。彼女が実家に発つ前日会った時は、余命いくばくもないそのおじさんのお見舞いに行くところだったのだが、ついにその日がやって来てしまったのだ。
彼は農業を生業としていて、一年中干し草が舞う環境の中で仕事していたために、その干し草のくずが徐々に肺を詰まらせていき、呼吸困難に陥っていったのだという。少しずつ肺の機能が低下し、じわじわと真綿で首を絞められるかのごとく息が苦しくなっていくとは、なんと残酷な病気だろうか。
彼が彼女に最期に残した言葉は「Chante bien(しっかり歌いなさい)」。これを聞いて思わず涙が出てしまった。
夕方、夕食の準備をしていると再び彼女がやって来て、中庭で一緒にお茶を飲まない?と誘ってくれた。スコットランドのビスケット、しっとりとした小さなパウンドケーキ、そしてダージリンティー。そういえば、しばらくこんなゆったりしたお茶の時間を過ごしていなかったなあ。
お茶を飲んでいると、夕立がさーっと降って来たので、二人でテーブルの端っこを持って、中庭の真ん中の木の下に移動。この木は夏になると葉っぱをこんもり茂らせて、強い日差しや雨を遮ってくれるのだ。現在は、鳩の夫婦と赤ちゃんがこの木の住人。
雨の音を聞きながら、なおもしつこくお茶を飲んでいると、フレデリックが仕事から帰ってきた。当然3人でお茶。
夕食を終えた10時頃、今度は同じ建物内に住むジャーナリストの女性がやって来た。彼女の家のテレビの映りが悪いので、うちはどうか知りたかったらしい。ついでにそのまま30分ほどフレデリックと話し込んでいく。
バカンスでがらんと空洞化したパリに居残っている者同士、なんとなく人恋しくなってしまっているのかもしれない。
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# by DegorgeRie | 2006-08-17 09:49

ピアノがふっ飛んだ、バスタブが走り回った!

こんにちは。今日からブログを書き始めることにしました。
毎日の更新はとても無理ですが、気が向いた時に書きたいと思います。
遠く離れた日本にいる友達には時々「そういえばパリであいつ何をやってるんだろうねぇ」と思われてるかもしれないので、その近況報告も兼ねることができたらと思います。

・・・というわけで、今日は、「こんなおバカな博覧会見たことない」っていう話。
7月14日から1ヶ月に開かれた「LE GRAND RÉPERTOIRE MACHINES DE SPECTACLES」(スペクタクルの大道具 大カタログといった意味)。その最終日に行ってきたのですが、これがほんとにくだらない。
会場は、1900年のパリ万博のため(つまりエッフェル塔と同時期)に建てられた、グラン・パレというところ。ここは天井が巨大なガラス張りのドームになった歴史的建造物で、ここに、舞台やTVなどで使われた大小さまざまな舞台装置が約150点、さりげなく、しかし圧倒的な存在感をともなって置かれている。
機械の多くには、デモンストレーターがついていて、当時どんな風に使われたかをジョークをまじえながら面白おかしく実演説明してくれる。
生卵投げ大砲、便器付きスクーター、自動拍手マシン、ジャンヌ・ダルクの串焼マシン、牛の足跡付け自転車・・・。脳みそがかゆくなりそう。隣にいるフレデリック(夫)をつかまえて「ねぇ、これって一体何に使われたの?」といちいち聞くが、彼とて「知らないよー」。
しかし、このEXPO会場にいる人達はみんなもう大興奮。「水大砲」が、こんなところでまさか?と思うくらいの大量の水をバシャーンと発射するや、冷たい水を全身にかぶって子供のようにはしゃぎまくっている。そしてまたこのEXPO、見学の順路なんてのはない。数々のマシーンが放つ奇怪な大音響にいちいち反応して、あっちに走りこっちに戻りの繰り返し。
私たちが会場に着いたのは午後4時頃だったが、会場に着くなり、このEXPOのメインイベントである「ピアノ投げ」が始まる直前で、円形の大階段の上に人垣が出来ていた。これは、かつて大きな岩を巨大な弓で放った石弓のシステムを使って燃えるピアノを投げるという非常に原始的な装置。しかしこれは本当に見事に空中に高く舞い上がり、落下して粉々に砕け散った。私は子供の頃、クラシックピアノを13年間習ったけれど、人生の中で、ピアノが空を飛ぶシーンを目撃する日がやって来ようとは・・・。
フランスに住んでいると、フランス人って一体どーなってんの?と思える出来事を日常でよく体験するけど(日本に住む外国人だってきっと同じ思いに違いないけど)、まさにこれはそれを肌で感じたEXPO。でもそれが愛とユーモアに溢れてて、とってもカワイイのだ。なぜ、ピアノを投げる?そんなこと思ってはいけない。意味はない。意味がないからいいのだ。逆に、ブランドが好きで、フランスを非常に美しいイメージでとらえている人達にとったら、ほんとにあり得ない感性だと思うけど。
興奮覚めやらないまま帰り道を歩いていたら、ふとこんな事が頭に浮かんだ。同じようなEXPOを日本でやるとしたらどうなるだろう。懐かしのドリフ「8時だよ!全員集合」でかつて使われた、「シーソーに乗ったら、反対側に重い石が落ちてきてバーンと飛び上がって、小麦粉のプールにまっ逆さま」的セットを集めて、東京ドームにいっぱい展示するようなものだろうか。それは興業的に成立するだろうか、人々は見たいと思うだろうか。こうして、とりとめもない妄想とともに、8月とは思えないほど寒いパリの夜は更けていった。

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(写真右)自動拍手マシンはスイッチひとつで拍手のスピードが切り替わる画期的マシン。
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# by DegorgeRie | 2006-08-16 10:38