ドゥドゥをなくしました

2週間くらい前。たまに買うパン屋さんの店先で見つけて、あら大変、と思いつつ笑ってしまったのが、これ。
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J'ai perdu mon doudou (ドゥドゥをなくしました)

ドゥドゥというのは、2年前に一度書いたことがあるのですが、フランスの子供たちがどこに行くにも肌身離さず持っている大切なぬいぐるみのこと。
何の動物か一目ではとってもわかりにくい絵(鼻はブタ風、でもツノがあるから牛?)に、ぬいぐるみの持主の名前(ガスパー君、絵の印象からして推定年齢5~6才?)、そして、SVP(お願いします)→携帯の電話番号、という単純明快さで人目を引くポスター。

うちの子供も何度となく失くしたことがあるので身に詰まされるのですが、母子共々、切羽詰まった状況でしょう。ドゥドゥは子供達にとっては、親友に匹敵する存在ですから。
パン屋さんというのは、フランス人がほぼ毎日足を運ぶ場所。だからこういったお知らせ、広告には絶大な効果があります。
もしかしたら、このパン屋さんに立ち寄った帰り道か何かに失くしてしまったのかもしれません。

それにしても、そんな大切なドゥドゥを捜索するポスターが、こんな絵でわかるかいな、とつっこみたくなるような子供の書いた可愛いらしい絵。
あまりにものほほんとしていて、これでは何がなんでも探してあげなきゃ、という気概を損ないます。

で、すごく気になってこのパン屋さんの前を通るたび店先を確認していたのですが、ちょうど1週間後くらいでしょうか、ポスターは影も形もなくなっていました。
きっと誰かが見つけてくれたんだと心の中で願っています。

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# by degorgerie | 2008-12-23 08:57 | Comments(4)

Japon, Je t'aime

今回帰国してじんわりと心に感じたことがあります。
それは、日本の人の包み込むような優しさと、心のこもったそれでいてさりげない気遣い。
今回なんだか自分でもびっくりするくらい沁みるように繊細に感じられています。

今回は子供と二人で経由便を利用したのですが、ロンドンから東京までの長い距離、男性のキャビンアテンダントの方がすごくいろいろ気遣ってくださいました。
東京に到着して、ロンドンで積み込まれたはずのベビーカーがとうとうコンベアーから出てこなかった時、ロストバゲージ担当の研修生の女性が、あちこちを奔走しながら探し回ったのち、その人のせいではないのに「本当に申し訳ありません」と頭を下げ、書類作りを手伝ってくれました。

家に着いたら休む間もなく疲れた身体を引きずりながら、国民健康保険の手続きに市役所に向かいました。窓口の方は、来庁者を1秒も待たせることなく窓口に迎え入れ、スピーディーで確実な仕事をしていました。書類の書き入れが間違っていても優しく訂正を促してくれ、海外からの転入届け→国民健康保険証の発行→年金の手続き→児童手当受給の手続きを、1時間足らずの驚異的な速さで終えることができました。それはまるで、車に乗って1時間の道のりを赤信号にたった一度もひっかかることなくたどり着いたような感覚でした。
健康保険を持って、子供連れで内科に行きましたが、順番まで時間があったのでちょっと外で待っていたら、窓口の人が「次ですよ」とわざわざ呼びに来てくれました。

昨日は、あるアーティストのコンサートに行きました。少し前から、その人の私設ファンクラブみたいな存在の女性とHPを通じて何度かやり取りをしていたので、会場で初めてその人に会いました。会うなり彼女はバッグから、そのアーティストの出演した貴重な番組をダビングしたDVDを何枚も取り出し、初めて会う私にくれました。それは、彼女が忙しい時間を割いて、会ったこともない私のために作ってくれたものでした。

今日は1年ぶりに地元の駅ビルの地下の食料品売り場に行きました。そこでは、野菜たち、魚たち、商品たちがみな、愛情を持って大切に並べられ扱われているのを感じました。野菜を積んだワゴンを持って商品を並べる人、テナントの販売員さん、レジの人、駐輪場の人、みんながみんな本当に幸せそうに、私はこの仕事が大好きですっていう態度で仕事をしていました。

帰国してから会う人会う人みんな笑顔で真心たっぷりの対応。この優しさたちはみな、色に例えると淡いパステルカラーのような感じでほわーんと漂っていて、睡眠不足や病気の疲れが一気に癒されていくような、心のヒーリング体験でした。
これはきっとこの国では当たり前のことなのですが、それが奇跡のような出来事に思えました。
みんなみんなとても楽しそうで素敵で涙が出そうになりました。

パリでこんな空気が感じられるところは正直言ってかなり少ないです。
極端にいえば「刺すか刺されるか」「やるかやられるか」みたいな殺気立った毒があちこちで立ち昇る街です。
自分の仕事に無関心無感動な人、私のせいじゃないと必ず言い訳する人、お金をもらうために厭々やっていると顔に書いてある人、人を不快な気分にさせることが死ぬほど好きな人、顔立ちや身なりで差別的な態度をする人、がたくさん溢れています。
パリに行ったはじめの頃、そのことはとてもショックでした。
渡仏する前に、お客様満足に関する仕事をしていたからなおさら、どうしてこの国の人は、自分も他人も気持ちよくなる仕事のやり方を知らないのだろう、と疑問でした。
滞在が長くなるにつれて、お国柄、として割り切ることでやり場のない怒りを抑えるようになり、ついには怒りの感覚も薄れ、嫌な思いをしても無感情になることで自分を守れるようになりました。

それが、ここにきて、こんな風にこの国への愛しさがひしひしと込み上げてくるのは、どういうわけなんでしょう。普段、怒りに対して無感情を装っている部分と引き換えに、優しさに対する感受性がやたらと強くなってしまったのでしょうか。
この優しい人たちと民族としてつながっていることを心から嬉しいと感じています。

P.S.・・・と言ってもパリで私がしょっちゅうひどい目にあっているというわけわけではありません。
幸運なことに、愛情豊かでかけがえのない人達に囲まれて暮らしていることを付け加えておきます。
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# by degorgerie | 2008-10-07 00:14 | Comments(6)

訪日のお知らせ。

10月3日から11月28日まで里帰りが決まりました。
メールアドレス変更のお知らせと一緒にメールでみなさんにお知らせしようと思ったのですが、
メールソフトあるいはサーバーに問題があるようでまだみなさんに送りきれていません。
この場でお詫び申し上げます。

そして、「来日楽しみにしてます」とか「訪日のお知らせを受けました」とお返事をいただいた方々へ。
国外アーティストか大統領になった気分をありがとうございました(笑)。

一年ぶりの里帰りで、行きたい場所や会いたい人がたくさんいます。
見に行きたい展覧会、コンサートなどお知らせしますので、ご興味とお時間のある方は
ぜひご一緒して下さい。
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# by degorgerie | 2008-09-25 08:53 | Comments(6)

フランスと日本の狭間で

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先週は、2種類の許可証を更新してきました。

ひとつはパリの地下鉄ミュージシャンの演奏許可証。
これは2003年の秋に初めて取得して、それからずっと春と秋、半年ごとに更新しています。
地下鉄ミュージシャンを管轄しているのは、地下鉄を運営するRATP(パリ市交通公団)が母体となったパリ11区のこじんまりとした事務所。地下がオーディションスタジオ、1階は待合室、2階が事務所という作りです。
ここで働いているのは、ムッシュー・ナゾという文字通りナゾのムッシューと若い女性の2人。
ナゾのムッシューの肩書はディレクター。感じは悪くないのですが、愛想は決してよくありません。ただし、彼の机の後ろを見ると、有名人とおぼしき人たちと肩を並べた写真が隙間なく貼られていて、かなりミーハーであることがわかります。
一方、事務を受け持つ美しい黒人女性はいつも、この雑然としたオフィスには不似合いなほどのファッショナブルな洋服を身にまとい、愛想がよく親切で、てきぱきした仕事ぶりです。
半年前にデザインが一新してスタイリッシュに生まれ変わった許可証。実はもうだいぶ長いこと地下鉄での演奏はしていませんが、来年くらいからまた始めたいという気持ちが出てきています。

そしてもうひとつの許可証は滞在許可証。
今回とうとう10年間有効のカードを手にすることができました。
結婚前は学生としての身分で、一時滞在許可証を最低でも1年ごとに更新していました。
結婚後は1年ごとの更新に、この結婚が偽装結婚でないという証明書類(2人が一緒に生活している証拠となる書類)をいくつも持って、夫と一緒に県庁に足を運びました。その面倒な更新を3回繰り返し、ようやく10年のカードを得ました。
アメリカのグリーンカードの審査はフランスの比ではないけれど、いったん許可されれば永住権が得られるわけですが、フランスにはそういうものは存在しません。

学生として来た最初の頃は、「自分は一時的に音楽を勉強しにフランスに来た日本人」という意識があったから、特に悩むことはありませんでした。
でも、フランスでの滞在が長くなるたびに、自分がどんどん国籍不明の存在になっていくような気がします。言葉の壁が大きいので、自分はこの国ではやっぱり外国人である、という意識が常にあります。また日本の情報にも取り残されているので、日本に帰れば浦島太郎状態。常にふわふわと地面から浮いているような気がします。

今、この頼りない自分の存在をかすかな糸でフランスにつなぎとめているこの許可証たち。
これからフランスでどうやって自分の場所を見つけていこうか、模索中の日々です。
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# by degorgerie | 2008-09-19 23:29 | Comments(5)

パン屋さんの出前

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ギュロン家の別荘に滞在中、久々に、ヤラれた!と思う食べ物に出会いました。その名も、ボーヌ風ブリオッシュ。ボーヌというのはこの別荘の周辺にある地方の名前です。ブリオッシュというものに全く興味のなかった私でさえ、マーブル状に練り込まれたキャラメルがけアーモンドには一発でノックアウトされました。子供の頃食べた菓子パンを連想させる懐かしさがあって、ふわふわ生地とカリカリアーモンドのよく合うこと。20センチ程の長さのパンに少しずつナイフを当てて、あともう1センチだけ・・・とか言い訳しながら止まりません。
買い物が不便なここでは毎朝、トラックでパン屋さんの出張販売が来るのですが、このパンはそこで出会ったもの。家の外にいると近所を巡回中のトラックのラッパが時折「ファー」と聞こえてきて、もうそろそろだな、というのがわかります。
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今朝は、ギュロン家の人々がみんな野良仕事に出払ってしまったので、私がパン係をまかされました。わくわくしながら待っていると、ついに可愛いラッパの音とともにトラック登場。欲しいパンと数を告げてトラックの中を覗き込むと、運転席にいたのはなんととっても愛想がよくて美しいお姉さん。こんな女性が売りに来てくれるんだったら、きっとおじいちゃん達は、買わなくてもいいパンまでついつい余分に買っちゃうだろうなあ。お会計はツケといてくれて、ひと月に1度まとめてというのも嬉しい。
買物は車で行かなければならないような田舎でも、焼きたてのパンが毎日買えるなんて、さすがフランス。・・・でもよく考えれば、日本でも昔々はそうやってお豆腐なんか買っていたんだっけ。物が今みたいに溢れていなかったから、お店の方からやって来てくれていたのかなあ。
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# by degorgerie | 2008-08-30 10:10 | Comments(6)