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大地くん

日仏家庭の9歳の男の子に日本語を教えに行って来ました。
彼の名前は大地くん。サッカーとテレビが大好きな、素直でお茶目で優しい男の子です。
以前一度公園でばったり会ったことがあるだけで、話しをするのは初めて。この年頃の男の子に慣れていない私は、初対面なのに家でいきなり2人っきりという状況に妙に緊張。まるで付き合って初めて恋人の家に遊びに行ったみたいでした。

大地くんのママから、子供に日本語を教えてくれる人を探しているんだけど、誰か知らない?と電話があったのが10日ほど前。大地君のママとは、ブリュッセルに住んでいるアコーデオン友達を介して1年前に知り合いました。とても仕事が忙しい彼女とは、なかなか会える機会がないのだけれど、遊びに行くとゴハンを作ってくれたり、パリに長く住む先輩としていろいろなアドバイスをしてくれたり、尊敬している素敵な女性。電話で話しているうちに、もしRieさんが引き受けてくれたら私もありがたいけれど、赤ちゃんがいて大変かなと思って、と話が展開していって、その後私自身もよく考えた結果、引き受けさせてもらうことになりました。今日はその家庭教師の第一回目でした。
引き受けた理由のひとつには、私も彼女と同じ問題を抱えているからというのがありました。自分の子供に日本語を話せるようになってもらうにはどうしたらいいだろう。そのことが最近の一番の関心事になっている私にとって、これはいい経験をさせてもらえるチャンスと思ったからです。もちろん、人に日本語を教えるなんて初経験。こんな素人に務まるだろうかとの不安はあります。でも大地くんがもっと日本語に興味を持ってくれて、上達してくれたら嬉しいだろうな、、、と考えると挑戦してみたくなりました。

大地くんは普段、日本語で話しかけるママにたいていフランス語で答えています。日本語は結構理解できるけど、いざ自分が話す段階になると母国語であるフランス語の方が彼にとっては断然楽。街を歩いていて、日仏家庭にお邪魔して、私はこういう母と子のやり取りを何度か見てきました。最初はそのちぐはぐなやり取りに驚きましたが、日本語を覚えてもらいたいママと日本語を覚える機会がなかなかない子供の会話としてはスタンダードなスタイルなんだと気がついたのは、自分が子供を持ってからでした。

大地くんのママから、ひらがな、カタカナも大分忘れてしまっていると聞いていたので、まず自己紹介からはじめて、大地くんの好きな物の名前を日本語で5つあげてもらいました。大地くんの好きなものは、"スポーツ、おんがく、そば、カレーライス、テレビ"でした。自分の名前と自分の好きなものとそれぞれひらがな、カタカナで書いてもらい、ひらがなカタカナ表に、今日書いた字をマルしてもらい、その中で自分が覚えていて本を見ずに書けた字を二重丸で囲んでもらいました。この表を次回はA3くらいの大きさにして持って行って、書ける字が増えるたびに、色で塗りつぶしてもらい、最終的に全部色で埋まるようにしてもらえたらといいなと思ってます。

今日はたった1時間ほどでしたが、集中して勉強もらうのがこんなにも難しいのかというのが一番の感想です。世の中の先生はこういう子供を数十人相手にしながら勉強を教えているなんて驚異です。

家に戻ってきて夕方託児所にオクターヴを迎えに行ったら、保母さんが、一枚の色画用紙を見せてくれました。右隅にペンでオクターヴの名前が書いてあって、シールが貼ってあります。「これ、オクターヴが作ったのよ」シールを貼るだけの簡単な遊びですが、オクターヴが生まれて初めて作った芸術作品(?)と思うと、愛しくて嬉しくてたまりません。こんな小さい子供でも、色の好み、形の好みってあるんですね。いっぱいいろんな色のシールを貼っている子もいましたが、オクターヴは緑と青だけで数も少なく地味。まだうまくシールをはがしたりすることができないこともあると思いますが、彼のちょっと控えめな性格が表れていました。

今日は2人の子供の成長を垣間見られるいい日になりました。
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by DegorgeRie | 2006-10-11 14:15

2年ぶりのレッスン

昨日は家でアコーデオンの出張レッスンを受けた。レッスンを受けるのは2年ぶりだったし、先生も初めて習う人だったので前日からドキドキだった。
随分前から新しい先生を探していたのだけど、自分が好きな奏者はお年寄りだったり、演奏に忙しかったりと、レッスンをしてくれるケースは珍しい。
考えているうち、ふと、ある女性のアコーデオニストに頼んでみようと思い立った。
彼女の名前はヴィヴィアンヌ。3人の子供を育てながら(1人は赤ちゃん)、maM(マム)というグループで音楽活動をしている人だ。
ヴァイオリニストと組んで活動している彼女の音楽は、決して派手ではないけれど、温かく心に沁みるものがあって、何年か前に出会った時からとても好きだった。ジャンル的には、ミュゼットやジャズ、さまざまな国の伝統音楽をたくみにミックスして、オリジナル曲も精力的に作っている。私が以前習っていた先生を自分達のグループにゲストに招いたりしている関係で、私は何度か彼女に会っているので、彼女なら頼めるかもしれない。
でも問題は彼女はパリに住んでいないこと。それに赤ちゃんもいることだし、相当忙しい日々を送っているだろうと思う。
でもあれこれ考えてもしょうがない。まずはダメもとで一度メールで相談してみようと思った。すぐに返って来た彼女の返事は「パリには頻繁に行くから時々でよかったらレッスンOKよ。やってみましょう」そして最初に出したメールから1週間も立たないうちにレッスンを受けることになった。

妊娠、出産、育児でしばらく休んでいたアコーデオンを再開したのは何ヶ月か前。再開してすぐに、自分がまるで長い間使われずに物置に放置されていた古びた機械のように感じた。指がなめらかに動かない。操作がぎこちない。まるで、油が切れてキィキィ音を立てているかのよう。
これはレッスンを受けなければ、と切実に思った。ウォーミングアップ、そしてモチベーションアップのためにも。

ヴィヴィアンヌが楽譜がパンパンに詰まった古い皮鞄を抱えてやって来てくれた。鞄の縫い目の3分の1ほどがほつれてぱかっと開いているため、中の楽譜がこぼれそうになっている。
お互いに貴重な時間をやりくりしているため、挨拶や近況報告もほどほどに早速レッスン開始。ジャズのインプロの練習方法、伴奏のリズムの取り方など、私が知りたいと思っていたコツを惜しみなく伝授してくれる。彼女の音楽に対する姿勢にも、彼女の誠実さ、真面目さがにじみ出ているけれど、教え方もやっぱり同じで、安心感がある。
音楽だけではなく、女性としても可愛らしく、憧れてしまう。
約束の2時間があっという間に過ぎ、時計を見て驚いた彼女は、軽くパニック状態のまま「大変!次のランデヴーに遅れちゃうー。7区のグルネル通りってどこかしら」と慌しく中庭を駆けて行った。ふと見ると、部屋に、貴重な楽譜がいっぱい詰まった例の壊れた皮鞄がそっくり残されている。「鞄忘れてるー」と慌てて声をかけるとまたバタバタ走って戻ってきて、またメールでやり取りしようねー、と笑顔を残しながら、走り去って行った。
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by DegorgeRie | 2006-10-10 08:39

屋根の上のアコーデオン弾き

c0085370_93921.jpg私には、少ないながらも気のおけないフランス人の友達が何人かいる。
ギタリストのローランもその一人。
もう3年も前に私が地下鉄で演奏していた時に偶然通りかかって「一緒に練習しない?」って声をかけてきてくれたのが彼だった。最初はバイオリンとギターとアコーデオンという編成で練習を始めたのだが、いつの間にかメンバーが変わって、最近はギタリスト2人と私。週末になるとお互いの家に集まって練習したりしている。
今日は2ヶ月ぶりにローラン宅で音あわせ。フランス人のバカンスはたいてい1ヶ月と長い上、この夏のメンバーのバカンス時期がものの見事にずれてしまったため、近頃なかなかみんなの顔が揃わなかった。
アパートの入口のドアを押して中庭に入り空を見上げると、ローランと彼の恋人、ノガが最上階の窓からこちらに向って手を振っていた。
「今降りてくからちょっと待って!」
窓から叫んで30秒もしないうちにローランが少し息をはずませて1階まで降りてきた。エレベーター無しの最上階6階までアコーデオンをかついで登るのはいつもローランの役目。その足取りが今日はなぜか妙に弾んでいる。
階段を軽やかに登りながら彼の口から思いがけない言葉が飛び出した。
「Rieは屋根に登ったことある?今日は屋根の上で練習しようよ」
えーっと、屋根???私の聞き間違いじゃないよね。屋根の上って今言った?
部屋の前に到着すると、ノガともうひとりのギタリスト、ブノワが待っていた。
すかさず「そんなのやめなよ。危ないでしょ」と、ノガ。
だいたい屋根の上にどうやって登るの?
「はしごがあるから平気」
だって楽器かついでなんて登れないでしょ。
「大丈夫大丈夫。心配しないで。とにかく、超気持ちがいいんだから~」
ローランは私の中では、ラテン気質そのものという感じで、頭より身体が先に動く、根っからの楽天家。
それに対して、ブノワは、ラテン気質ではあるけれど、どちらかと言えば筋道を立てて冷静に物事を熟考する慎重派タイプ。
その彼も「俺も屋根の上はちょっと怖いなあ。楽器が弾けるようなリラックスした状態でいられるかどうか」と少し心配顔。
でもローランはかなりのハイテンションで、もう完全に"屋根の上で練習モード"になってしまってる。
お茶を飲んで、一息ついた後、「じゃあ屋根の上行こう」とさくさくと準備を始め出したローラン。
演奏できるかどうかはわからないけど、前から一度屋根の上に登ってみたいと思っていた私。好奇心がむくむく湧いて来て、とりあえず様子を見に登ってみよう、ということに。

階段の踊り場の天井には屋根に通じる四角い窓があり、普段は木の板でふさがれているのだけどその板をぱかっと開けて、そこにはしごをかける。
私たちが階段を立てかけてさあ、登ろうという時に、ローランと同じ階に住むお向かいのおじいちゃんが階段を下からゆっくり登ってくる。外出から帰ってきたようだ。ローランがすかさず、「これから屋根の上で練習だよ。いいでしょ」と言うと目を丸くして一瞬何のことか理解できなかった様子だったけど、笑って、私達が無事登っていくのを見守ってくれる。屋根の上には思ったより簡単にほんの数秒で無事到着。
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そして、そこで見たもの。初めて登ったパリの屋根の上。
なんて気持ちいいんだろう!!
それは、想像していた以上のものだった。
10月の太陽は優しく微笑み、力強い風は時折ブルーグレーの屋根の間を駆けていく。
エッフェル塔が遠くの方に、お土産屋さんで見かける小さな置物のように可愛らしくぴょこんと頭を出している。
屋根の傾斜は思ったよりも緩やかだし、スペースも20畳分くらい(パリの屋根なのに畳で勘定するのもヘンだけど)あるだろうか。ちょっとしたテラス風。思ったより広々しているから下の道路が見えることもなく、恐怖心はほとんど感じない。これなら、ちょっとしたカフェが開けちゃうかもと非現実的な妄想が沸いてくる。屋根の上のカフェ。

ブノワもこの思いがけない新しい練習室にご満悦な様子。でも「危険な感覚がしないのがかえって危険。屋根の上ということをつい忘れてしまうと、普通に歩いていって落ちてしまうかもしれないよ。気をつけて」と能天気な私達にきちんとアドバイスすることも忘れない。それはその通り、ちょっとした心のゆるみが大惨事になりかねないと、肝に命じる。
そして、早速練習開始。でも楽譜を置こうとするとすぐに風がぴゅーっとやってきて飛ばされそうになる。必然的に楽譜は片付けなければならなくなる。でもこうなってみると、これはこれで曲を覚えるいいきっかけになる。
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(左:ローランと私。右:ブノワとローラン)

映画"アメリ"の曲を1曲弾き終わったところで、どこからか「ブラボー」という声。振り返ると道をはさんだ向かい側の最上階の住人が窓から顔を出している。演奏を聴いてくれるのは屋根の上の住人であるハトくらいと思っていたのでちょっとビックリ。でも嬉しくて3人で手を振って応える。
c0085370_8513581.jpg屋根の上の練習室で発見したこと。それは、曲に対してとても集中できるということ。部屋で練習する時のようにパソコンやビデオなど情報機器がまったく何もないから注意が散漫になることがない。それに、野外で練習する時は何かといろいろな人が話しかけてきて集中できないことが多いけど、ここならまずそんな心配はない。
フランスのシャンソンに"パリの屋根の下"っていう曲はあるけど、"パリの屋根の上"っていう曲がないのは残念。3人でこういうタイトルの曲をオリジナルで書いたらどうだろう。
屋根の上で練習、なんてもちろん堂々とできる行為じゃない。でも、天気がよくて気持ちのいい日は、しばらくこの練習スタイルがやみつきになりそうだ。
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(練習しているうちにだんだん日が暮れて太陽が落ちてゆくのが見える。これは夜7時くらいの風景。左の方にエッフェル塔が)
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by DegorgeRie | 2006-10-02 11:23

パリのアコーディオニスト Rie のオフィシャルブログ


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