2009年 04月 23日 ( 1 )

孤独な魂系 -グラン・トリノ

クリント・イーストウッドの俳優業最後の映画と聞いて1ヶ月ほど前に、劇場に足を運びました。
日本での公開はいよいよ今週土曜日ですね。

私は個人的にこの手の「孤独な魂系」映画(勝手にそう命名させてもらいます)に弱いです。
そういった意味では、数年前のミリオンダラー・ベイビーと共通するものをたくさん感じました。
というか、イーストウッドが演じる役柄は、マカロニ・ウエスタンの頃からすでに、孤独の影をひきずっている役が多いような気がします。実生活では決して家族から孤立しているはずはないですが、こんなにも孤独な役が似合う役者も珍しいなあと、映画を見ながら思いました。
主人公は、息子夫婦とも孫達ともそりがあわず、自分一人の世界に浸って生きている、偏屈&頑固なジジイ。その感じが、今書いていて気がつきましたが、なんだか、アルプスの少女ハイジのおじいさんみたい。そして、ハイジ的役割を果たす役柄も。「孤独な魂系」だけでもすでにぐっときてしまうのに、もうひとつの私の弱点「頑なな老人」も加わって、ダブルパンチです。

映画全体のトーンは、ほとんどのイーストウッド映画に共通するように実に静かで淡々としています。
そして淡々としたシーンの中に、アメリカ的風景が、ぽつん、ぽつんと浮き上がって見えてきます。
それは休みの日に自慢のオールド・カーをピカピカに磨く姿であり、一日の終わりにテラスで缶ビールを飲む姿であり、野球帽を被ってテレビの野球中継に興じる姿であり。
そういった古き良きアメリカの匂いが画面に漂う中、「やられたらやり返す」アメリカ的暴力が描かれ、昔と今のアメリカ臭がプンプンでした。

俳優業最後と頭にあったせいか、映画のオープニングシーンでイーストウッドを見た時、「老いさらばえた」という言葉が思わず浮かんできてしまいました。老いさらばえたというのは表現がよくないですが、いぶし銀の魅力というのでしょうか。78歳。でもセクシーです。これは本当にすごい。

日本のオフィシャルサイトを見ると、試写会を見た著名人たちのたくさんのコメントが載っていました。
感動とか神とか奇跡とか、表現が大袈裟すぎて、どうもぴったり来なかったのですが、なかにひとつ、現代思想研究家の内田樹さんが、膝をポンと打ちたくなるようなうまいコメントをされていました。
こんな男性像に憧れのある方はどうぞ劇場に足を運んで下さい。

男性は本質的に虚構的な存在である。それが虚構だと知りつつ、
命がけでそれを演じきったときに「男は男になる」。
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by degorgerie | 2009-04-23 08:11 | Comments(10)

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