ロボットの星の王子さま

毎年初夏になると楽しみなのが、窓から見える美しいバラの花。
最初かたかった蕾が毎朝、少しずつほころびて満開になっていく様子を見るのが楽しみです。
うちのお庭にも、お隣のお庭にも、そのまたお隣のお庭にも、どのお庭の片隅にも、咲き乱れる色とりどりのバラ。
実は昔、もう60年も前にこのアパートの敷地内に住んでいたと言われる伝説のムッシュー「ムッシュー・フルール(花おじさん)」が丹精込めて育てたと言われるバラ達です。
さて、この美しいバラの季節に、今年は珍しいお客様がやってきました。
私達は4人は、2部屋しかないこの小さなアパートでまるで本当の家族のように、1ヶ月間生活をともにしました。とても不思議で夢のような楽しい日々でした。
お客様の名前は仮に、ロボットの星の王子さま、とでもしておきましょうか。
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私たち家族がこの王子さまに出会ったのは今から3年前、2007年の秋でした。
神宮外苑の目と鼻の先に住んでいる友達に誘われてやってきた、いちょう祭りの会場。私と彼女は出店の焼き鳥や焼きそばをつつきながら、1年ぶりの再会でおしゃべりに夢中になって、つい、フレデリックとオクターブの存在を忘れていました。気がつくと、2人がいない。。。あちこち探したあげく、広場の方へ行ってみると、やっと二人の姿が。二人のいる場所にはなぜか、たくさんの人が集まっていました。
私「もぉー、ずっと探してたんだよ。ここで、何やってたの?」
フレデリック「今さ、すごく、、、いいものを見たんだ。ロボットが、、、言葉はわからなかったけど、すごく感動的で、ピュアで、、、とにかくすごかった。。。」(フランス語で言ってると思って読んで下さい)
感動のあまり目をうるませながら、しどろもどろに説明になっていない説明を聞いているうちに、なんだかそのすごいものを私も無性に見てみたくなりました。
見ると、人が集まっているその向こうに、髪が茶髪の少年みたいな青年がいます。どうやら、その「すごいもの」というのは、その青年の大道芸だったみたい。
近づいて聞いてみると、もう1回最後のパフォーマンスをこれからするとのこと。

パフォーマンスは、ジャグリングやブレイクダンスなどを交えた楽しいものだったのですが、その中で何より心に響いてきたのは、ロボットのパントマイムでした。
これか、、、フレデリックがあんなに感動していたのは。。。
今まで何度となく大道芸を見たことはありました。でもその青年の作り出すパントマイムの世界は、離れ技を見てすごい、と思う種類のものではなく、心の奥に静かに沁みこんでくるようなものでした。気がつくと私も泣いていました。
30分くらいのパフォーマンスの後、青年は最後にみんなに向かって言いました。
「僕は沖縄で3年間サラリーマンをやっていました。ある日、道端で大道芸人の人に出会って、翌日会社をやめて大道芸人の道に入りました。今では自分の人生にまったく悔いはありません」
彼の笑顔は、こんなに偽りのない心からの笑顔というのを、今まで生きてきた中で見たことがあっただろうか、と思わせるような、晴れ晴れとした笑顔でした。
そして、こんなことも言いました。
「ぼくはいつかヨーロッパに行ってパフォーマンスをするのが夢です」
私は彼にお金を渡す時に「私たち、フランスに住んでいるんです。ぜひいつかフランスでもやって下さい」と声をかけました。
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            <オクターブの通うフランスの幼稚園にて>
それから1年後、2008年に彼は自分の劇団を立ち上げ公演、2009年には3カ月かけて「大道芸で日本一周」を制覇、など精力的に活動しているのを、インターネットやブログなどで、すごいなあと思って見ていました。
そして今から1年前の2009年の秋。お友達の朋ちゃんからまた、いちょう祭りのお誘いを受けました。家でホームパーティーをするということなので、パーティーの前に、みんなで、いちょう祭り会場に散歩にでかけました。広場で開催されている全国のうまいもの物産展のような出店の間を歩きながら、一緒にパーティーに来た人に向かって、「あのね、2年前にここで、素晴らしい大道芸人の人を偶然見たの。その人はね、、、」と話しながらふと広場を見ると、なんと。その本人が広場の真ん中で、パフォーマンスの準備をしているではありませんか。
2年ぶりに見る彼のパフォーマンスはさらにパワーアップしていました。
さらに、パフォーマンス後に、彼はきっぱりとみんなに向かって、こう言いました。
「僕、来年の春に1か月、フランスに行って、大道芸の修行をしてきます!」
何か木の実のようなものが上から降ってきて、自分の頭にぽこんと当たったような気持ちがしました。
これは誰かにお役目を与えるために、神様が空から投げたものかもしれない、と思いました。
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そして今年の3月頃。彼がブログの中で「フランスに行くのに、旅行代理店で宿泊費を聞いたら、ひと月30万円と言われました。高すぎる。。。滞在先どうしよう」と書いているのを読んで、メールを送りました。
「ホテルじゃなくて安いアパートを借りるという手もあるし、安く泊まる方法はいろいろありますよ。でも本当に構わなければ、狭いけどうちに泊まってもいいですよ」
そして、なんと、本当にうちに来ることになったのです。
フレデリックは前々から、彼がフランスに来たらうちに泊まればいいし、と言ったりしていたので、その知らせにものすごい喜びよう。
でも今まで、家族や友達が泊まりにきたことは何度もあるけど、友達でもない人がホームステイしに来るっていうのは初体験。それに、なんだかテレビの密着取材の人も一緒にフランスに来るらしい。
うーん、なんだかまたまた予想外の展開になってきた。。。

そして、5月のある日、彼は本当に、日本からパリの端っこにある我が家にやってきました。
我が家での暮らしでは、完全に家族の一員のように溶け込んでくれていました。
フレデリックが長男、彼が次男、オクターブが三男の、ものすごく年の離れた兄弟みたいでした。
即席デコボコだんご3兄弟の中で一番手がかかるのがフレデリック、次がオクターブ、一番手がかからないのが彼でした。野菜など相当好き嫌いがあるというのも私には隠して、頑張って食べていました。
オクターブは毎日遊んでもらって、本当のお兄ちゃんができたみたいに楽しそうでした。
目に見える透明人間、というのか、存在感のある空気みたい、というのかとても不思議な人でした。
一番おもしろかったのは、日常を一緒に過ごしていると、自然と創作活動の裏舞台のようなものが見えてきたことでした。これをもっとこうすればよくなるかもしれない、と常に考えながら曲や演技にアレンジを加えたり、新しいネタを考えたりといった作業を毎日見ていると、何か一人のアーティストのドキュメンタリーフィルムを見ているようでもありました。
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            <パリ ノートルダム寺院の前にて>
そんな彼のドキュメンタリー番組が、来週テレビで放送されます。
もしお時間のある人は見ていただけたらと思います。
もしかしたら(100%に近い確率で)私達家族も映っている、、、かもしれません。

日本全国の大道芸フェスティバル、ショッピングセンターや街中の路上、結婚式、学校などさまざまな場所で活動している彼をどこかで見かけたら、どうぞ温かい目で応援してあげて下さい。

☆フジテレビ「NONFIX」 9月23日(木) 2:40~3:40 (22日水曜日の深夜になります)

☆ロボットの星の王子さま HP
(MEMORYというところをクリックすると、フランス修行の時の日記が読めます)

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by degorgerie | 2010-09-18 10:04

パリのアコーディオニスト Rie のオフィシャルブログ


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