孤独な魂系 -グラン・トリノ

クリント・イーストウッドの俳優業最後の映画と聞いて1ヶ月ほど前に、劇場に足を運びました。
日本での公開はいよいよ今週土曜日ですね。

私は個人的にこの手の「孤独な魂系」映画(勝手にそう命名させてもらいます)に弱いです。
そういった意味では、数年前のミリオンダラー・ベイビーと共通するものをたくさん感じました。
というか、イーストウッドが演じる役柄は、マカロニ・ウエスタンの頃からすでに、孤独の影をひきずっている役が多いような気がします。実生活では決して家族から孤立しているはずはないですが、こんなにも孤独な役が似合う役者も珍しいなあと、映画を見ながら思いました。
主人公は、息子夫婦とも孫達ともそりがあわず、自分一人の世界に浸って生きている、偏屈&頑固なジジイ。その感じが、今書いていて気がつきましたが、なんだか、アルプスの少女ハイジのおじいさんみたい。そして、ハイジ的役割を果たす役柄も。「孤独な魂系」だけでもすでにぐっときてしまうのに、もうひとつの私の弱点「頑なな老人」も加わって、ダブルパンチです。

映画全体のトーンは、ほとんどのイーストウッド映画に共通するように実に静かで淡々としています。
そして淡々としたシーンの中に、アメリカ的風景が、ぽつん、ぽつんと浮き上がって見えてきます。
それは休みの日に自慢のオールド・カーをピカピカに磨く姿であり、一日の終わりにテラスで缶ビールを飲む姿であり、野球帽を被ってテレビの野球中継に興じる姿であり。
そういった古き良きアメリカの匂いが画面に漂う中、「やられたらやり返す」アメリカ的暴力が描かれ、昔と今のアメリカ臭がプンプンでした。

俳優業最後と頭にあったせいか、映画のオープニングシーンでイーストウッドを見た時、「老いさらばえた」という言葉が思わず浮かんできてしまいました。老いさらばえたというのは表現がよくないですが、いぶし銀の魅力というのでしょうか。78歳。でもセクシーです。これは本当にすごい。

日本のオフィシャルサイトを見ると、試写会を見た著名人たちのたくさんのコメントが載っていました。
感動とか神とか奇跡とか、表現が大袈裟すぎて、どうもぴったり来なかったのですが、なかにひとつ、現代思想研究家の内田樹さんが、膝をポンと打ちたくなるようなうまいコメントをされていました。
こんな男性像に憧れのある方はどうぞ劇場に足を運んで下さい。

男性は本質的に虚構的な存在である。それが虚構だと知りつつ、
命がけでそれを演じきったときに「男は男になる」。
[PR]
Commented by kaorise at 2009-04-23 11:54
私もイーストウッド大好き!アメリカの魅力そのものですね。
母方のおじいちゃんは戦前に20年ハワイで働いた人で、アメリカ的な保守派で頑固で偏屈ですぐ皮肉言ってました。
でも、、とっても可愛い人でした。
男らしさ、女らしさというのは「虚構」ですよね。男に限らず女だって女を命がけで演じきらなければ、女にはなれません。
最近は平等指向で「らしさ」が嫌われる傾向があるけど「らしさ(虚構)」を追究しない人には魅力がないんです。
男らしさ女らしさを苦しみながらも突き詰めると「人間らしさ」になるという事が忘れられている気がします。
Commented by Rie at 2009-04-23 17:54 x
*カオリちゃん
昨年の夏、野外映画の巨大スクリーンで、続・夕陽のガンマンを初めて見て、若かりし頃のイーストウッドのカッコよさにシビれました~。
ハワイで20年働いたおじいちゃんの人生がいたのかあ。映画になりそうだね~。
そうだね。女を命がけで演じ切りたいものだなあ。
でも女は子供を産むと、女よりも母を優先させちゃうから、どうしても自分が女であることを忘れてしまうことが多いんだよね。
男らしさと女らしさを突き詰めると人間らしさになる。深い話だなあ。
Commented by kaorise at 2009-04-23 23:47
いえいえりえちゃん、女を突き詰めたところに母性があるのですから大丈夫!
性的対象としての女の魅力などたいしたものではありませんよ。
姿形も若さも才能も富も地位もぜーったいにかなわないもの。。
男も女もすべての人が永遠に憧れ続けるもの。どんなにお金を積んでも買えないもの。
それが母性や父性に象徴される人間愛だと思います。
Commented by Rie at 2009-04-24 09:51 x
*カオリちゃん
カオリちゃんのみゅうちゃんに対する愛情は、まさしく母性そのものだなあ
と思います。
私は自分の子供にここまで愛情を注げるだろうかと恥ずかしくなります。
私も、母としての母性をもっともっと養いたいと思います~。
Commented by saheizi-inokori at 2009-04-24 10:19
日本では今日か明日くらいから公開されるはず、いかなくっちゃ^^。
Commented by Rie at 2009-04-24 18:00 x
*佐平次さん
ぜひぜひ。佐平次さんの感想も知りたいです。
ブログにアップされるのを楽しみにしています~。
Commented by ユキ at 2009-04-25 02:12 x
「孤独な魂系」映画っていうネーミングの仕方、気に入りましたー!
いぶし銀の魅力←も! うんうん、これはやはり観なくては!!
そして!
kaoriseさんとりえさんのやりとりの文章の中にいっぱい素敵なヒントがあって勉強になります〜。
Commented by Rie at 2009-04-26 01:53 x
*ユキちゃん
前作のチェンジリング(フランスではL'echangeというタイトルみたい)も硫黄島からの~なども見たいと思ってるの。
よかったら見に行ってユキちゃんの印象も教えてね。
Commented by cocomerita at 2009-07-27 17:08
こんにちわ
kaoriseさんのブログから飛んできました。
私も、グラントリノ見ました。
甘ったるい感情が安売りされているようなこの世の中で、
甘ったるくない、そして内田さんのコメントにあるように、最後まで、必死で男にやりきった老人。
そういうことをあえて語るクリントイーストウッドの繊細さ、今の世の中に対する辛辣さのようなものも見え、
決して見せかけにごまかされない彼の洞察力、深さみたいなものを感じました。
だから、ミリオンダラーズ、、とか硫黄島、、とか、が撮れるのですよね。
心の底から、涙が湧き出る感じがしました。
Commented by Rie at 2009-08-10 12:36 x
*cocomeritaさま
はじめまして。こんにちは。
更新ままならないブログにわざわざ来ていただいてコメントくださって
ありがとうございます!
グラントリノ見られたんですね!
心の底から涙が湧き出る感じ、わかります!
クリントイーストウッドは、極限状態の人間の姿を描くのが抜群に上手だと
思います。
ぎりぎりまで追いつめられた人間の決断やふるまい。そこにくっきりと照らし
出される人間の生身の姿を垣間見て、思わず涙があふれてくるような
気がします。
by degorgerie | 2009-04-23 08:11 | Comments(10)

パリのアコーディオニスト Rie のオフィシャルブログ


by Rie
プロフィールを見る